新型コロナウイルスの感染者への治療で気管支ぜんそくに使われる薬「シクレソニド」を使い、患者3人の症状が改善したと治療チームが報告していたことが分かりました。
引用:ANN
シクレソニドは、販売名はオルベスコ®です。喘息の吸入薬で一日一回の吸入で一日効果が維持されます。薬の粒子が小さいので比較的高齢者や若年者にも簡単に吸入ができます。今回この吸入薬を使用して効果を認めたということですが、この薬事態に抗ウイルス作用があると考えるには、ちょっと無理があります。この薬の有効成分は”ステロイド”です。つまり抗炎症作用と免疫抑制作用です。気管支喘息の患者では、自己のリンパ球の暴走により気管支が狭くなり、咳が止まらず痰が絡み、呼吸困難感に陥ります。そのリンパ球の暴走を落ち着かせるのがこの薬の役目です。この薬がコロナウイルスに効果があるのであれば、体内の免疫細胞が初めて出会った未知のウイルスに対して頑張りすぎた結果、通常以上の炎症を引き起こし、その炎症が肺炎を引き起こしていた可能性が考えられます。
今回の私の予想ですが、決して突拍子もないことではなく、普段の臨床でも同様のことが起きえます。気管支喘息の患者さんがウイルス性の肺炎になって喘息がひどくなった場合には免疫の暴走を抑えるためにステロイドを吸入のみならず、点滴や経口で投与します。そのほかの例としては、肺炎球菌による肺炎があります。肺炎球菌にこれまで感染したことがない人は初めて感染すると激烈な肺炎になります。この肺炎が重症化する可能性が高齢者は高いのでワクチンを接種するのです。仮に感染しても体内の免疫にとっては未知の菌ではないので、冷静に暴走することなく対処でき、激烈な肺炎にはなりません。日常の臨床においては、重度な肺炎になった人やなりかねない人にはステロイドの使用は決して珍しいことではないのです。
ただ今回のニュースの面白いところは、投与後早期にウイルスが陰性化している点でしょう。肺炎が軽快傾向を示すことと、ウイルスが陰性化することが必ずしも一致しないことが今回のコロナウイルスの特徴と言ってもよいでしょう。ステロイドはリンパ球をアポトーシス(自己死)に向かわせます。リンパ球に侵入したコロナウイルスごとアポトーシスさせたのだとすると非常に興味深い高価であるといえます。
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