こんにちは。
企業勤めの内科医ヒロスケです。
群馬大医学部付属病院で乳児がメトヘモグロビン血症になったとのニュースを見て驚きました。
知識としてはありますが、ずいぶん久しぶりに聞いた病名だったのでちょっとおさらいをしました。
メトヘモグロビン血症ってどんな病気?
ヘモグロビンは赤血球中に存在して、体の隅々まで酸素を運搬する働きを有しています。
ヘモグロビンの中で酸素と結合する部位が「ヘム」と呼ばれる部位で、このヘムには鉄が含まれています。
メトヘモグロビンとは、このヘム中に含まれる鉄が酸化してしまった状態です。
酸素と結合することは可能なのですが、酸素の運搬能が失われます。
メトヘモグロビンが正常なヘモグロビン中の1~2%を占めるとメトヘモグロビン血症となります。
メトヘモグロビン血症の症状は?
ヘモグロビンが酸素を運搬することが出来なくなるので、体内の酸素が不足することになります。
出現する症状は、メトヘモグロビンが15‐20%以上に増加するとチアノーゼを生じます。逆に10%未満だと無症状の場合が多いと言われています。
メトヘモグロビンが、40%以上になるとチアノーゼ以外に頭痛やめまい,呼吸困難,意識障害といった種々の症状が現れます。
60%を超えると生命に危険を及ぼします。
メトヘモグロビン血症の診断は?
メトヘモグロビンは酸素との結合能力は失われていません。
したがって血中の酸素濃度を測定するパルスオキシメーターだと正常値を示す場合があることから注意が必要です。
やはりチアノーゼを認めたときには、動脈血そのものを採血して検査する必要があります。
動脈血採血の検査の項目にはメトヘモグロビンが含まれており、疑いさえすれば診断までの時間は数分で済みます。
メトヘモグロビン血症の原因は?
原因には遺伝性と後天性に分かれます。
後天性については、薬剤や硝酸性窒素が挙げられます。
薬剤性にはアミン類、ニトロ化合物、亜硝酸エステル類、サルファ剤などが挙げられます。
薬剤性については、内科医のたしなみとして知っておくべき知識です。
硝酸性窒素は、肥料や生活排水による水質汚染でしばしば目にする物質です。
ただ仮に摂取してしまっても大人だと胃酸で無毒化してしまいます。
しかしが3か月未満の乳児だと胃酸の分泌が不十分であるため問題が生じます。
摂取した硝酸性窒素が亜硝酸塩になり、この亜硝酸塩がメトヘモグロビン血症の原因になります。
メトヘモグロビン血症の治療薬は?
確立した治療方法はありませんが、メチレンブルーという薬剤を使用することが多いです。
メチレンブルーはヘム中の参加した鉄を元に戻す効果があり、投与後1時間程度効果が出てきます。
あとは、メトヘモグロビン血症の原因を検索することです。
今回の群馬大のケースは地下水によるものと発表されています。
これから群馬大と地方自治体による水質汚濁の原因検索が始まると考えます。
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