楽天イーグルスのドラフト3位前田銀治外野手が肺動静脈瘻で治療を行ったとのニュースを見ました。
私は肺動静脈瘻の診断に関わったことはありません。
実際に見たこともないのですが、何をもってこの疾患を疑ったんだ?
って、疑問が生じたので調べました。
結論から言うと通常の健診レベルでも診断のチャンスが十分にありそうです。
こんにちは。
企業勤めの内科医ヒロスケです。
今回は「肺動静脈瘻を疑うきっかけと診断」についてです。
肺動脈、肺静脈って何?
小学校の理科で習ったのを覚えている方もいるかもしれませんが、改めて説明します。
肺動脈は右心室から肺に向かって血流を送る血管。
肺静脈は肺から左心房に戻ってくる血管。
したがって、酸素が多く含まれているのは、肺静脈。
テストに出ますよ。
肺動静脈瘻ってどんな病気?
基本的には先天的な疾患だと認識していただければ結構です。
家族性の遺伝で発症する例もあります。
「瘻」とは穴のこと。
動脈と静脈の間に穴が開いている状態が動静脈瘻です。
上記したように肺動脈は肺胞で二酸化炭素と酸素を交換し、肺静脈で左心房に戻ってきます。
しかし、肺動静脈瘻があると二酸化炭素と酸素を交換していない血液が動脈の流れに流入します。
十分に酸素化されていない血液が動脈に混ざるので、低酸素血症になります。
全身倦怠感、呼吸困難などが生じるのは想像できると思います。
また静脈で生じた血栓は通常は肺の毛細血管がフィルターになっているのですが、動脈側に簡単に抜けてしまうために脳梗塞を引き起こします。
外傷(抜歯や怪我)で静脈に侵入した細菌も動脈の血流にのり、脳に至ると脳膿瘍を生じさせます。
肺動静脈瘻を疑うきっかけは?
ずばり胸部レントゲンの異常です。
肺動静脈瘻があると瘻の部位が”こぶ”となり、レントゲンに写ります。
参照:Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 32(3): 244-249 (2016)
胸部レントゲンで異常を認めて、そのうえでその他の症状から肺動静脈瘻を疑えば、診断に至ることはできそう。
ただ確定診断には、心臓カテーテル検査が必要なので、呼吸器内科医である私の出番ではない。
胸部CT上の所見は、肺がんや結核などの肺内病変とは明らかに違う。
明らかに血管の奇形を疑うので、本疾患を知らなくとも心臓を専門にしている医師に相談できます。
肺動静脈瘻の治療
楽天の前田選手は心臓カテーテルでコイルを使って穴を塞いだようですね。
治療の侵襲性を考えれば、心臓カテーテルの治療が第一選択になります。
瘻が大きいと手術が必要なるのでしょう。
手術は胸腔鏡による肺の部分切除かな。
前田選手は大丈夫?
瘻が塞がれば問題ないでしょう。
瘻が沢山ある場合は治療が難しいようですが、記事を見る限りはそのようなことはなさそうです。
肺動静脈瘻がありながらも野球選手としてトップクラスの成績を修めてきたからこそプロ野球選手になったのだと思います。
とくに症状はなくとも低酸素状態は併発してたのではないでしょうか?
体力的なハンデはあったはずです。
今回治療を済ませたことで、パフォーマンスの向上も期待できるのではないでしょうか?
バファローズファンの私としては、やや複雑な心境ですが、2022年シーズンの活躍を期待しております。
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