ノバルティス ファーマ株式会社(代表取締役社長:綱場 一成)は本日(3月19日)、脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する遺伝子治療用製品として「ゾルゲンスマ®点滴静注」(一般名:オナセムノゲン アベパルボベク、以下「ゾルゲンスマ」)の製造販売承認を取得しました。
引用:ノバルティスファーマプレスリリース
「ゾルゲンスマ」は、SMAの根本の原因である欠損遺伝子であるヒト運動神経細胞生存タンパク質を発現するための遺伝子を組み込んだアデノ随伴ウイルス9型のカプシドを有する非増殖性遺伝子組換えアデノ随伴ウイルス(AAV9)を利用することで、正常なヒト運動神経細胞生存タンパク質を発現させる画期的な遺伝子補充療法です。この技術は素晴らしいことは文句の言いようがありません。この技術を応用することで先天的にある特定のタンパク質を欠損している患者さんを治すことができるようになる可能性があります。そんな画期的な新薬が承認されたのになぜPMDAが怒っているのか?
この薬は日本の制度で可能な限り承認までの期間を短縮させることのできる「先駆け指定制度」の該当品目であったにも関わらず、その制度を活用しませんでした。
先駆け制度とは、患者に世界で最先端の治療薬を最も早く提供することを目指し、一定の要件を満たす画期的な新薬等について、開発の比較的早期の段階から先駆け審査指定制度の対象品目(以下「対象品目」という。)に指定し、薬事承認に係る相談・審査における優先的な取扱いの対象とするとともに、承認審査のスケジュールに沿って申請者における製造体制の整備や承認後円滑に医療現場に提供するための対応が十分になされることで、更なる迅速な実用化を図るものです。
引用:厚生労働省ホームページ
実際に先駆け指定制度を用いずに承認申請を行うと10カ月前後かかりますが、さきがけ指定制度では半年で承認まで行きつくことができます。たかが4カ月ですが、その間PMDAも厚生労働省も承認手続きを円滑に行うために様々な手続きを同時進行することで時間短縮を図ります。当然その間の苦労は通常の審査以上であることは間違いありません。PMDAと企業の両者が承認に向けて迅速に対応しようとする制度であるにもかかわらず、PMDAだけが苦労してノバルティスは通常業務での対応を行ったとのことですので、PMDAは当然激怒しますよね。
申請から承認にかけて、申請内容の疑問点や改善点についてPMDAから数度となくやり取りを行います。PMDAから投げられた照会事項を出来る限り企業は素早く投げ返さないと承認時期が遅れます。したがって照会事項のやり取りの期間は企業側は必死に対応します。ノバルティスはその対応も悪かったようですね。質問の回答に10か月かかった照会事項もあったようですね。6カ月での承認を目指す制度内にて回答に10か月ってあり得ないです!
新薬承認は企業にとっては利益につながる活動ですが、その薬を待っている患者にとっては死活問題です。製薬企業が儲けと役人に気を取られるようであればおしまいです。少しでも早く自分たちが作った薬を患者さんに届けたいと思っているのであれば、自分たちが汗をかくことに躊躇しないはずです。今回の対応はあり得ないことです。ノバルティスは2018年11月1日に申請しています。先駆け指定品目のため、制度を活用すれば19年前半の承認が見込まれていました。審査が長期に及んだため、承認は本年3月19日です。この間に病状が悪化した患者さんにどうお詫びをするつもりでしょうか?企業姿勢として非常に問題があると思います。
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