CT報告見ず、がん発見1年遅れ!?なぜ見落としが起きるか?

医療関係
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大阪府立病院機構大阪はびきの医療センター(大阪府羽曳野市)は29日、70代の女性患者のコンピューター断層撮影装置(CT)画像に腎臓がんの疑いがあるとした画像診断医からの報告を主治医が確認せず、発見が1年以上遅れたと発表した。今月になって左腎細胞がんと診断され、肺への転移も判明した。これから治療を始める。

引用:共同通信社

ガンの見落としのニュースはなかなか無くなりませんね。当該患者の気持ちになるといたたまれません。特に画像診断医が指摘しているにも関わらず報告を見ていないというのは、主治医をかばうこともできません。なぜ無くならないのでしょうか?同じがんの見落としでも検診での実施したレントゲンの見落としとは意味が異なります。

検診での胸部レントゲンや胃透視検査では数百人もの画像所見を数人の医師で確認をします。一般に検診の画像検査で異常を指摘するのは一人の医師で20人中1人~2人くらい。これ以上の異常を指摘しようとすると疑陽性を多く見つけていることになると言われています。もちろん施設や対象患者によってこの頻度は変わりますが、一般的な人間ドックや若い人を含む集団検診だと20人に1人~2人です。こういった方に精密検査をお勧めして実際に異常を指摘されるのは、さらに20人に1人~2人となります。検診をする医師は各々自分の基準があります。どの程度の異常をもって精密検査に回すか?です。集団検診で100%を望むことは不可能です。100%を求めて検診を受けたいという人は、病院の人間ドックで肺は胸部CTを撮影して、上部消化管は胃カメラを飲んでください。100%とは言いませんが、胸部レントゲンや胃透視検査よりよっぽど精度はあがります。ちなみに検診で胸部レントゲンを行う理由は肺結核の発見を目的としていた過去の名残であり、肺がん検診での胸部レントゲンの価値は疑問視されています。

さて報告書の見落としに戻りますが、CTは通常目的別に頭部、頸部、胸部、腹部、骨盤部に分けて撮影されます。場合によってそれぞれを組み合わせて取ることもありますが、例えば肺炎の患者さんに腹部までCTを取ることはありませんし、胆石の患者さんに胸部のCTを取ることはありません。これは保険診療上認められていませんし、被爆の観点からも仕方のないことです。しかしながら胸部CTでも肝臓や腎臓の一部は写ります。また肝臓の検査のためのCTでも一部肺は写ります。こういった自分が目的としていない臓器の病変の画像所見まで確認していない、もしくはできていないことが見落としの原因に繋がっていることはたまにあります。私は呼吸器が専門です。したがって胸部CTを確認することはしょっちゅうですが、必ず肝臓の画像所見まで見るように意識しています。それでも専門外の臓器になるので必ず放射線科医のコメントを確認しています。ただ放射線科医のコメントは患者の診察の後日につきます。患者が再診するのであれば次の来院時に確認できますが、異常なしで再診がないとそのままになる可能性があります。そうならないために異常がなくとも次週の外来時には前の週に診察した患者のCTのコメントを確認するようにしてます。

すべての医師が何とか見落としがないように気を付けようとはしていると思います。でもそれでもゼロにはならないでしょう。ゼロにはならないという前提で対策を立てるべきです。例えば、所見の確認のサインをしなければいけない、確認するまで電子カルテでポップアップが出てくるなどPCを利用した対策があるはずです。見落としのニュースを見る時にいつも思うのですが、「今後こういったことがないように注意します。」ではなく、今後はこうやって対策を組みますといったコメントがないことがいつも不思議です。

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