COPD患者の酸素投与における注意点とは?目安はあるのか?

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COPD患者が救急外来に運び込まれたときの症状の大半は、「息が苦しい」です。

普通の人であれば、息が苦しいのであれば酸素をマスクで大量に吸わせてあげればいいのでは?

と、思います。

でも、この酸素が命取りになることがよくあります。

どんなに息苦しいと訴えていても、

マスクで大量に酸素を吸わせてはいけません!

 

こんにちは。

企業勤めの内科医ヒロスケです。

今回は「COPD患者の酸素投与における注意点」についてお話しします。

COPD患者に大量の酸素投与が危険なワケ

COPDという疾患は、肺の収縮性が損なわれている疾患です。

つまり肺が縮まない病気です。

私が良く患者説明に使うのは、伸びきった風船です。

新しい風船は大きく膨らみ、小さく縮みます。

古い風船は大きく膨らみますが、縮みません。

それと同じです。

 

肺が縮まないと息が吐けずに、体内に二酸化炭素がたまります。

健常人の呼吸困難感は、体内の二酸化炭素の濃度に依存しています。

つまり息を止めて苦しくなるのは、体内に酸素が無くなるから苦しくなるのではなく、二酸化炭素がたまることで息苦しさを感じるのです。

しかしCOPD患者は、二酸化炭素がずっと体内にたまっているので、二酸化炭素が体内にたまっていることに慣れてしまいます。

慣れてしますと、息苦しさの基準が酸素の濃度に変化します。

息苦しさが酸素の濃度に依存しているCOPD患者に大量の酸素を投与すると、酸素に満たされ呼吸をすることを本能的に止めます。

呼吸が止まるのです。

 

酸素は体内に十分あります。

呼吸は止まったままです。

呼吸器によって二酸化炭素をはきだす必要があるのに、止まったままであるため二酸化炭素が加速度的に溜まります。

すると体内の酸・アルカリバランスが極端に酸性に傾きます。

体内の酸・アルカリバランスが大きく崩れると人は死にます。

これをCO2ナルコーシスといいます。

酸素に満たされ、二酸化炭素がたまり、意識がなくなり、呼吸が止まる状況を指します。

COPD患者の酸素投与の目安は?

一般に呼吸状態を計測するのはサチュレーション(SpO2)を利用することが多いです。

COPD患者は、このSpO2が90%あれば十分とします。

健常人のSpO2は99%~100%が普通です。

しかしCOPD患者はある程度の低酸素にも慣れているので、90%でも大丈夫です。

また90%あれば最低限の酸素は供給されており、臓器障害の可能性は低いと考えられます。

 

決して珍しくない事象として、息苦しさを訴えるおじいちゃんのSpO2が90%で低い

と、考えた家族や救急隊員が自己判断で酸素の投与量を増やして、CO2ナルコーシスになって救急搬送されてくるパターンがあります。

 

酸素の投与量を増やすと酸素で満たされるため、一見して楽になって眠ったように見えます。

しばらくして呼吸が止まっていることに気がつきます。

実はCO2ナルコーシスで意識がなくなっているだけのパターンです。

COPD患者がCO2ナルコーシスになったら?

人工呼吸器を使用するしかありません。

気管内挿管をして人工呼吸器で管理するか、、非侵襲性陽圧換気療法を選択するかはケースバイケースです。

気管内挿管をすると二度と人工呼吸器が外せなくリスクもあります。

通常COPD患者さんに酸素を投与するときには、SpO2は90%を目安とします。

救急であってもです。

酸素は時に毒になります。

自己判断での酸素量の変更は絶対にしないでください。

 

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