アドエアは、吸入ステロイド(ICS)と長時間作用型吸入β2刺激薬(LABA)の合剤です。ステロイドと言えば免疫抑制剤なので、吸入ステロイドは新型コロナウイル感染のリスクになるのでは?と質問を受けることがあります。答えとしては「そのようなデータはありません。」です。むしろ新型コロナウイルス感染は拡大しているからこそ、アドエアを始めとした吸入ステロイドは中止してはいけません。
1.アドエアの使用を中断してはいけない理由
気管支喘息が増悪するときのパターンは大きく分けて二つあります。一つ目はアレルギーの影響、二つ名は感染症です。一つ目の代表は花粉症のシーズンです。花粉症のシーズンには気管支喘息の患者さんの中でアレルギー体質の人は鼻炎がひどくなります。鼻炎の増悪を契機に気管支喘息も悪化します。二つ目の感染症に関しては、寒くなると喘息がひどくなる人が多いです。このパターンの患者さんは寒くなり風邪をひき、その風邪を契機に気管支喘息も悪化します。後者のパターンの患者さんは冬になると吸入薬を止めるように指導すると思いますか?決してしません。むしろ感染を契機に喘息が増悪するのを防ぐためにアドエアは止めません。新型コロナウイルス感染も同様です。呼吸器症状を発症するとされる新型コロナウイルス感染のためにアドエアを止めることは、喘息発作を誘発させていることと同義です。
2.アドエアで、新型コロナウイルス感染症になりやすくなる?
アドエアの中に含まれる吸入ステロイドであるフルチカゾンは、気道の細菌感染を起こしやすいと言われています。と、いうことは吸入ステロイドは危険なのでは?という意見に理屈は通っています。しかしながら現段階では吸入ステロイドは新型コロナウイルス感染の危険因子であるとのデータはありません。新型コロナウイルス感染の様々な危険因子が同定されているにもかかわらずです。リスクの無いものを無いと断言するのは有るものを有ると断言するより困難です。現状認められていない限り、理屈だけで使用を控えるのは賢明ではありません。むしろ発作のリスクが増す可能性の方が高いと言えます。医学は理屈だけでは説明できないことがたくさんあります。
3.アドエアは新型コロナウイルス感染に効果がある?
シクレソニド(オルベスコ)には抗ウイルス作用がありそうだというデータはあり、そのデータを根拠に臨床試験を行っています。基礎実験では、シクレソニド以外のICSでも同様の実験をしています。残念ながら抗ウイルス作用を示したのはシクレソニドだけだった言うことです。
大切なことは、薬の中断は必ず主治医と相談をしてください。勝手に中断して、その結果救急車に乗るようなことになってはいけません。仮にアドエアを中断して発作になったら、吸入ステロイド以上のステロイドを経口もしくは点滴で投与されることになります。
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