老化細胞にGLS1阻害剤は有効!?理論を分かりやすく説明。

高齢者医療
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東京大学のグループが老化細胞が生存し続ける仕組みと、

その仕組みからGLS1阻害剤が老化細胞を選択的に除去することを発表しました。

少し読んだだけでは、理解が追い付かなかったのですが、

元の論文や関係論文を読むことでだいぶ理解できてきました。

せっかくなので知識を整理を含めて記事にしますね。

 

老化細胞とは?

 

老化細胞は、何かしらのストレスによって

増殖・分化することを停止した細胞を指します。

この老化細胞はこのままアポトーシス(細胞死)してくれれば

新陳代謝により新たな細胞が生まれて、

有能な細胞が代わりを務めてくれることになります。

しかし、老化細胞は自身の特殊な代謝経路を持っており、

自然とアポトーシスに向かうことがありません。

そうして、徐々に体内に老化細胞が蓄積することで

十分に働かない細胞が増え、

糖尿病や動脈硬化、腎障害

と、いった疾患が生じると考えられてきました。

 

老化細胞の代謝経路とは?

代謝とは、生命維持のために栄養を取り込み、

利用する一連の反応のことです。

今回の研究の成果の一つに、

老化細胞の代謝を明らかにした」ということがあります。

 

何かを取り込み、分解して利用するためには

細胞内にその何かを利用するための仕組み(遺伝子)が必要です。

老化細胞とそのほかの細胞を比較した結果、

グルタミン代謝に関係したGLS1が

著明に増加していることを発見したのです。

 

GLS1が老化細胞に関与しているのを証明するには?

GLS1に限らず、何かしらの遺伝子が関与していることを

証明するのにはいくつかの方法があります。

最も簡便な方法は、

その遺伝子を選択的に阻害する薬剤を投与すること

です。


 

GLS1阻害剤を試験管内の老化細胞に加えると

老化細胞がGLS1阻害剤を加えるよりも

著明に減少していることを確認しています。

 

GLS1阻害剤を投与することで、

細胞内の酸塩基バランスが酸性に傾き

細胞はアポトーシスを起こすようです。

その理由として、グルタミン酸代謝経路を阻害することで

細胞内に産生するはずだったアンモニアが

産生しないことがあげられています。


 

実臨床に応用するうえでの不明点は?

マウスの実験では老化細胞を除去することで

腎機能、肺機能、肝機能、脂肪組織

に好影響を及ぼすことが報告されています。

これは老化細胞を除去し、新陳代謝が亢進したためと

私は捉えました。

ただ、この新陳代謝と老化細胞のアポトーシスのスピードには

差が生じないのでしょうか?

例えば糖尿病網膜症では、網膜に生じた新たな血管は

正常の血管と比較して脆弱であり、眼底出血のリスクが高くなります。

そのため、新生血管はレーザーで焼灼するのが基本です。

 

アポトーシスのスピードが勝り、

新陳代謝が追い付かない可能性があるのかないのか?

個人的にはそこが心配であり、興味がある点です。

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