私は本業は製薬企業に勤めていますが、
外来診療も週に1回程度行っています。
外来は糖尿病を含む生活習慣病から呼吸器領域など
幅広く対応しています。
糖尿病の診療では極力薬剤に頼らない血糖コントロールを
心がけていますが、
薬剤投与が必要だと判断した症例については
躊躇なく薬剤投与を行うようにはしています。
今回は「イニシンク配合錠」についてです。
本剤の特徴と良い適応とされている患者さん
って、どんな患者さんでしょうか?
イニシンク配合錠ってどんな薬なの?
イニシンク配合錠は配合錠というからには
2種類以上の薬剤の合剤です。
イニシンクはDPP-4阻害剤であるアログリプチンと
ビグアナイド系のメトホルミンの2剤の合剤です。
両剤とも実臨床では非常に使用頻度の高い薬剤です。
医師によって好みがありますが、私はよく使用します。
両剤併用のメリットは?
両剤併用のメリットは安全性です。
まず低血糖の生じる可能性が低い事です。
両剤ともその作用機序から低血糖を生じる可能性が低いといえます。
メトホルミンの作用機序は、肝臓での糖新生抑制,
肝内脂肪量の低下,筋肉における糖の取り込みを
促すことで血糖を下げます。
アログリプチンの作用機序は、DPP-4という酵素の働きを
抑制することから始まります。
DPPー4はインクレチンというホルモンを分解します。
インクレチンはインスリンの分泌を促進します。
つまりDPP-4を阻害することで、インスリンの分泌を
促すことができるため血糖を下げることができるということです。
インクレチンは消化管から分泌され、
食事の後に分泌されます。
つまり食事をしていない状態では
DPP-4阻害剤は効果を示さないので低血糖には
陥りにくいとされています。
イニシンク配合錠ってどんな患者さんに効果がある?
比較的若い方(70歳未満)で活動性の高い方については
メトホルミンは糖尿病治療の第一選択肢になることが多いです。
メトホルミンと運動療法は相性の良い治療です。
上述したように筋肉が増えれば
それだけメトホルミンの効果が期待できます。
そしてメトホルミンだけで効果が不十分であったり
初診の段階で非常に高い血糖値を示している場合には
DPP-4阻害剤を追加します。
両剤の処方を受けている患者さんで
しばらく処方の内容の変更がない場合には
2剤をそれぞれ飲むよりも配合剤を内服することで
飲み忘れを防ぐことができ
また薬の代金についても負担が減ります。
結論としては
- メトホルミンのみではコントロール不良の患者さん
- 比較的若く活動性の高い患者さん
- 2種類の薬を内服するのに飲み忘れなどがある患者さん
- 他にもたくさんの内服薬がある人
そういった患者さんに良い適応と考えられます。
糖尿病を始めとした生活習慣病の治療のゴールは
血液検査のデータを正常化することではありません。
血液検査はあくまでの治療の参考データであり
目標ではありません。
生活習慣を是正して、規則正しく健康的な生活を送ること
その結果薬なしでも正常化したデータが得られること
こそが目標です。
薬を内服している限り目標の道半ばです。
皆さんが健康的な生活を送り、病院に通わなくとも
大丈夫な状態になることを期待しております。
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