ヘリコバクターピロリ菌が胃がんの発生に関連している
と、いう事実は周知のものと思います。
実際に疫学データから
ピロリ菌感染→萎縮性胃炎→胃がんの発生
の順にがん病変が発生することを示しています。
スキルス胃がんとピロリ菌の関係ですが
ピロリ菌感染によって胃の未分化がんの発生率が
上昇するとのデータがあります。
スキルス胃がんは未分化がんに該当します。
したがってスキルス胃がんとピロリ菌は
関係があります。
ピロリ菌の感染を確認する方法は?
ピロリ菌の感染を確認する方法は6つあります。
- 迅速ウレアーゼ検査
- 顕微鏡による鏡検法
- 培養法
- 抗体検査
- 便中の抗原測定
- 尿素呼気試験法
主に使用されているのは、
迅速ウレアーゼ法、抗体検査、尿素呼気試験法
の3つだと思います。
①迅速ウレアーゼ法
ピロリ菌にはウレアーゼという特殊な酵素を持っています。
胃カメラで胃の粘膜を生検します。
その組織中にウレアーゼが含まれているか否かを確認します。
具体的に生検した組織を特殊な液体につけます。
液体には尿素をpH指示薬が含まれています。
ウレアーゼが含まれていると尿素がアンモニアに変化します。
アンモニアに変化すると液体がアルカリ性に変化するため
pH指示薬の色が変化します。
この検査の最大のメリットはスピードです。
胃カメラで萎縮性胃炎を発見した時に生検を実施し
検査液につけるだけで陽性であれば20分で色が変化します。
弱点は検出感度が低いことです。
特に除菌後の検査には向いていません。
②抗体検査
近頃は人間ドックでセットにしている施設もあります。
通常の血液検査に数mlを追加するだけですので
人間ドックや検診などに向いている検査と言えます。
また特発性血小板減少症のような
胃の症状とは無関係ではあるもののピロリ菌が関係している
疾患を持つ患者さんにとっては良い検査法と言えます。
③尿素呼気試験
ピロリ菌がウレアーゼという酵素を持つことは
既に上述いたしました。
本試験もウレアーゼの特徴を利用しています。
ウレアーゼは尿素と反応すると
アンモニアと二酸化炭素に分解します。
発生した二酸化炭素は血液中に吸収されます。
吸収された二酸化炭素は肺に移行して呼気として排出されます。
以上の仕組みを利用した検査です。
検査の詳細には化学の知識が必要なのですが、
尿素の化学構造式はCH4N2Oです。
通常の尿素に含まれている炭素(C)の質量は12です。
この炭素の質量が13である13Cという特殊な炭素があり
この特殊な炭素を含んだ尿素を薬剤として内服します。
服用した尿素が分解され二酸化炭素となり
呼気に排出されるときに排出された二酸化炭素中の
13Cを検出することでウレアーゼの存在を確認します。
ピロリ菌がいないと13Cを含んだ二酸化炭素は
検出されないのでピロリ菌感染の診断となります。
本検査は除菌後の確認目的に実施されることが多いです。
ピロリ菌って除菌したほうが良いの?
早期胃がんの治療を行った後に、
ピロリ菌の存在を確認できた症例で
追跡調査を行っています。
本調査ではピロリ菌を除菌することで
除菌しなかった患者さんと比較して
3年以内の胃がんの再発は3分の1に減少していました。
参照:Fukase K. et al.: Lancet. 2008 ; 372(9636) :392-7
その他の調査では、胃潰瘍、十二指腸潰瘍や胃炎
などの患者さんを対象とした調査があります。
本調査では10年間で胃がんになった人の割合を調査しています。
胃がんの発症頻度は
- ピロリ菌に感染していない人では0%(280人中0人)
- ピロリ菌に感染している人では2.9%(1246人中36人)
であったと報告されています。
参照:Uemura N. et al.: N Engl J Med. 2001 ;345(11)
これだけのデータを見せられると
ピロリ菌の除菌は絶対にするべきだ!
と考えちゃいますよね。
しかし、これらの調査で見落としてはいけない点があります。
それは調査対象者がピロリ菌によって
既に胃潰瘍等の病変を発症している
患者さんを対象としている点です。
つまりピロリ菌が陽性でも何も病変を有していない
患者さん(?)に治療が必要かどうかは分からない
と、いうことです。
ただ将来の萎縮性胃炎への進展のリスクもあり
早期の除菌が有効であるというのが定説となっています。
したがって除菌をしたほうが良いか?
と尋ねられたら、
「したほうが良いでしょう」
と、答えています。
除菌の方法は?
除菌は抗生剤2剤と胃薬(プロトンポンプ阻害剤)
を1週間内服します。
頻用される組み合わせの除菌の成功率は3/4くらいです。
近年の抗菌剤に耐性を獲得したピロリ菌が問題になっています。
除菌治療を中途半端にすると耐性菌が出現するので
除菌をするときはしっかりとすることが大切です。
1回目の除菌に失敗しても、2回目・3回目にも
チャンスがありますので、あきらめずに除菌は行いましょう。
健康な内にご自身の保険の見直しを
イザとなってからでは遅いのでご検討を
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