キイトルーダの乳癌患者に対する成績は?承認の見込みは?

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免疫チェックポイント阻害剤であるキイトルーダの乳癌に対する治療成績はどのようなものなのでしょうか?すでに非小細胞肺癌、腎細胞癌、頭頚部癌、食道扁平上皮癌、尿路上皮癌、悪性黒色腫、古典的ホジキンリンパ腫、MS-High固形癌を有効な治療成績を認め、承認を得ています。

1.海外のキイトルーダの承認申請の状況

2020年7月30日に米国メルク社は、キイトルーダのトリプルネガティブ乳癌に関する適応拡大の申請を米食品医薬品局(FDA)に行い、受理されたことを発表しています。承認申請の対象は、進行乳癌に対するものと高リスク早期乳癌に対するものです。

2.キイトルーダが投与できる乳癌患者は?

トリプルネガティブ乳癌(TNBC)とは、乳癌において治療戦略を立てる上で重要なホルモン受容体であるエストロゲン受容体とプロゲステロン受容体が陰性であり、また腫瘍の増殖因子であるHER2受容体の3つが陰性であることが確認された乳癌を指します。ホルモン受容体やHER2受容体が陽性である場合には、これらの受容体をターゲットにした薬剤により良好な治療成績を得てきました。しかし、これらの受容体を持たない癌患者さんはこれらの治療の恩恵を得られてきませんでした。そういった意味で、TNBC患者さんにとっては、非常にうれしいニュースです。ただキイトルーダが使用できる患者は、トリプルネガティブの上で、PD-L1発現がある程度認められていなければなりません。

3.キイトルーダによるTNBC乳癌患者の治療成績は?

米国メルク社は、今年の米国臨床腫瘍学会(ASCO2020)で、TNBC患者さんに関しての試験の結果を発表しました。試験は治療歴のない切除不能局所再発もしくは転移を有するTNBC患者さんを対象に、標準化学療法群と標準化学療法群+キイトルーダ群に分けて両群の治療成績を比較しました。この試験において、PD-L1が強く認められる患者さんに対して、キイトルーダの標準治療上乗せで、無増悪生存期間の中央値が、標準治療群5.7か月から9.7か月へと延長することを確認しました。無増悪生存期間とは、治療開始後より乳癌の悪化が認められるまでの期間を指します。またASCO2020においては、手術適応のある早期のTNBC患者さんにおいての治療成績も発表されています。この試験では、術前に標準治療にキイトルーダを上乗せし、銃後にもキイトルーダの投与を継続することで、手術検体で乳癌の消失率(pCR)が標準治療のみの群よりも優れており、また術後の無再発生存期間(EFS)も良好な傾向を認めていました。術後のpCR率はキイトルーダ上乗せ群で64.8%であり、標準治療のみの群では51.2%でした。EFSは観察期間18か月の時点で、91.3%と85.3%とキイトルーダ上乗せ群に良好な傾向を認めています(統計学的には有意差はなし)。

4.日本のキイトルーダの乳癌に対する承認時期は?

米国メルクがFDAに承認申請をしたことはプレスリリースされていますが。日本のメルク社はPMDAへの承認申請をしたとは発表していません。FDAの承認申請の状況を見ながら後追いで承認姿勢を行うのかもしれませんね。試験そのものには日本人も参加していますので、日本は蚊帳の外ということはないはずです。よっぽど日本人だけ効かなかったとか、副作用が強かったとかいうのでなれば。

癌患者さんとって一日でも早く、新たな治療方法が世に生まれるのは非常に喜ばしいことです。有効な治療で、安全性にも問題がないのであれば、日本法人も速やかに動いてもらいたいものです。

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