おそらく中学生の実験で誰もが経験したことがあるであろう硫化水素の発生の実験。中学校の実験では、硫化鉄に塩酸を加える実験を行うと思います。この実験で、硫化水素が発生し、そのガスが「卵の腐ったような臭い」がすることを経験します。
硫化水素は有毒ガスであり、実験では試験管の口を仰いで臭いを確認するのがルールですが、毎年このガスを直接吸入することによる事故が報告されます。吸い込むとどうなるのでしょう?またその治療や処置はあるのでしょうか?
津山市教委は2日、市立鶴山中(同市山北)で硫化水素を発生させる理科の実験後に2年生の男女9人が体調不良を訴えたと発表した。保健室で学校医の診察を受け、同日中に全員が授業に戻った。
引用:山陽新聞
1.硫化水素を吸い込むとどうなるの?
まずそのガスが眼、気道を刺激します。気道の刺激が強いと、場合によって24時間~72時間で肺水腫を発症することもあります。特に高濃度で、致死的な量を吸い込むと昏睡が生じ、それに伴い呼吸抑制、振せん、チアノーゼ、痙攣といった症状を認めます。もちろん命の危険が及ぶことは言うまでもありません。さらに高濃度の硫化水素を吸入すると一呼吸以上でほぼ即死です。
2.硫化水素を吸い込んだ後の治療や対処方法は?
空気中に漂っている硫化水素は、水酸化ナトリウムを利用することで中和することは可能です。しかしながら人体に入った硫化水素を無毒化することのできる中和剤は存在ません。もし何らかの事故で硫化水素を高濃度に吸入してしまった場合には、人工呼吸器装着の上、全身状態の管理をすることになります。高圧酸素療法なども試みられてはいますが、その効果はまだ評価できていません。
3.硫化水素中毒を疑ったときの対応
卵の腐った臭いを強烈に感じる環境からは、まず逃げ出すの重要です。あなたが硫化水素中毒になる危険を避けなければなりません。そのうえで消防署に連絡しましょう。またそれほど強烈ににおわないのであれば、患者を速やかに新鮮な空気が吸える環境に移しましょう。そのうえで救急車を呼びます。その時点で呼吸器症状が認められなくとも24時間~72時間は肺水腫などの重篤な呼吸器症状を発症する恐れがあります。呼吸が止まっていた場合には、間違っても救命処置としての口うつし人工呼吸などはしないください。二次被害の原因になります。
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