プロポフォールは中枢神経系で働くことで、神経伝達を阻害し、結果鎮静を得ることのできる薬剤です。通常は手術やICUでの人工呼吸器管理をされている患者さんの鎮静を目的に使用します。
今回広島県世羅町にある公立世羅中央病院でのプロポフォールを使用した医療事故が報告されています。
広島県世羅町の公立世羅中央病院で2019年2月、入院中の90代男性が鎮静剤投与による医療事故で死亡し、病院側が遺族に謝罪し示談金1800万円を支払っていたことが2日、分かった。運営する世羅中央病院企業団は「遺族の意向」を理由に、事故について公表していない。
引用:中国新聞
示談金の値段や、事故に対する批判など様々だと思いますが、ここではプロポフォールを選択した理由について考察します。
1.プロポフォールってどんな薬なの?
プロポフォールは手術やICUでの人工呼吸器管理の時の鎮静目的に使用します。作用としては、鎮静作用、催眠作用、抗不安作用、健忘作用、制吐作用、鎮痙作用などがあります。しかし,鎮痛作用はありません。したがって手術時には通常医療用麻薬を使った鎮痛コントロールが必要になります。
2.プロポフォールの特徴は?
何といってもプロポフォールの特徴はそのキレの良さです。投与直後に効果を認め、また長時間投与しても中止後短時間(10 ~ 15 分)で覚醒します。長時間投与後であっても、速やかに血中濃度が低下するので、鎮静作用が遷延しないのです。鎮静目的に使用されるミダゾラムと比較すると、その特徴が際立っており、そのキレの良さから鎮静レベルが調節しやすいのが特徴です。ことがポイントです。
3.世羅中央病院でプロポフォールが使用されたワケ
理由については正式に公表されているわけではありません。しかし上述したようにプロポフォールの特徴を考えるとその理由が見えてきます。おそらくお亡くなりになった男性が夜間に興奮し、暴れるような状態になったのではないでしょうか?その状況でご本人がけがをする可能性やスタッフに危害が及ぶ危険などが生じ、速やかに効果が期待できるプロポフォールが選択された。また患者が高齢であり、呼吸抑制が生じてもキレの良さから重大な事故にはならないと判断したのではないでしょうか?
残念ながら、予想以上に鎮静が深くなったため、お亡くなりになったと考えるのが妥当でしょう。ただ患者さんと医療スタッフを守るために実施した処置であったとは考えられます。既に示談も成立しており、これ以上の詮索は無用と考えます。今、我々ができることは高齢者が入院した時に不穏になった場合の対処方法をあらかじめ決めておくくらいでしょう。プロポフォールを使用した時は、躊躇なくICUに入れるべきなんでしょうね。
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