こんにちは。
企業勤めの内科医ヒロスケです。
今回のお話は「心肺停止」についてです。
心肺停止とは?
心肺停止とは、心拍と呼吸が停止している状況を指します。ほっとくと間違いなく死にます。
「心肺停止にて救急搬送」というのは、内科医で救急外来を担当している限り、必ず遭遇する状況です。
病院によって頻度は異なりますが、3次救急を担当している病院であれば週に数件の患者に遭遇します。
実際にどの程度助かる確率があるのでしょうか?
救急搬送されてからの対応について簡単に説明しながら、確率についても説明したいと思います。
心肺停止で救急搬送されてきたら行うこと
心臓マッサージは救急隊員が行いながら搬送されてきます。
すでにAEDも装着されています。
まずは点滴のルート確保です。
人手があれば、点滴のルートは両手両足で4人がかりで採れる人が確保します。
心肺停止ということは、血流が止まっているということですので点滴ルートの確保は普段より困難です。
それと同時に鼠径部の動脈より採血を行い、血液検査を提出します。
これらと同時に気管内挿管を行います。
一分一秒が惜しいので全ての処置を同時進行に行います。
したがって人手が必要です。
院内に待機している医師が総動員されることも珍しくありません。
ちなみに搬送前に気管内挿管と血管確保が済んでいることもあります。
搬送先がクリニックだったり、道端で倒れた患者さんのそばに偶然にも医師がいた場合などですね。
その場合には気道の確保、血管の確保を最優先で行います。
心肺停止で救急搬送されてからの医師の思考回路
気道の確保、血管の確保が終了したら、原因の検索です。
血液検査のデータは早い項目では結果が出るのに10分も掛かりません。
したがって上記の処置を行いながら結果を確認し、原因の目途を付けます。
簡単にいうと、原因は心臓なのか?脳なのか?その他か?です。
私は呼吸器内科が専門ですので、その目途を立てたら循環器科もしくは脳神経外科をコールします。
心拍が戻っていればCTも確認できますが、瞳孔の開き具合で左右差があれば脳の障害、血液検査の結果から心筋梗塞が疑われば心臓です。
考えることは結構単純です。
具体的になにをどうする?という方針は専門医の到着を待つまで不要です。
そして、何をどうするかは、現場に移動中の医師が移動しながら考えてます。
心肺停止で救急搬送されてきたときに大切なこと
先にも述べましたが、大切なのはとにかく人手を集める事。
一人で頑張らないこと。
ですから、現場では病院内で手が空いてる医師が全員集合できるような院内放送が流れます。
ご存じの方もいると思いますが、コードブルーってやつです。
そして、落ち着くこと。
やることは多いですが、あまりむつかしいことは要求されていません。
少なくとも心臓マッサージを行っていれば、そのうち人手が集まります。
病院外で心肺停止に出くわしたときは?
実は対応は同じです。
まずは人手を集めましょう。
救急車を呼びましょう。
頸動脈を触れて拍動を感じなければ心臓マッサージを行いましょう。
あとは救急隊員が来るまで頑張るだけ。
偶然居合わせた医師でもそれくらいしかできません。
だって、何も道具がないんですもの。
心肺停止から蘇生を行って助かる確率は?
心肺停止から1分ごとに生存確率が10%低下して、5分何もしなければ絶望的。
なんてプレッシャーをかけることがよく言われます。
いや、事実なんですよ。
でも、逆に言えば心臓マッサージさえしておけば、救命率は倍近くになります。
救急隊が到着するのに8分くらいが平均です。
その8分を何もしていないと、1か月後の生存率は10%前後です。
心臓マッサージを行って20%前後。
これを高いとみるか低いとみるかは個人の価値観です。
若い人の心肺停止からの蘇生率は、高齢者のそれと比べると高くなります。
ですので、諦めずにパニックにならずに蘇生措置を行うことは重要です。
心肺停止を目の前にパニックにならないためには
おおよそ素人で、パニックにならない人はいないと思います。
でも二つだけ覚えておいてください。
1つ目は人を呼ぶこと。「だれか救急車!!」の一言です。
もう一つは心臓マッサージ。
この二つ以上のことは私でもできません。
パニックになるのは、何をすればいいのか分からなくなるからです。
だからこの二つのことだけを覚えておいてください。
AEDも救急隊員が来てからでもいいんです。
もしかしたら、近くに医療関係者がいたり、救命救急のトレーニングを受けた人がいるかもしれません。
とにかく人を呼びましょう。
そして心臓マッサージだけを行いましょう。
動画では、周りに指示を出すように言っていますが、そんなことは二の次です。
目の前にいる人を助けるために心臓マッサージを行っているあなたは十分な仕事をしています。
人間ドックも最低限の検査であれば自宅での検査が可能な時代です。
コロナ禍で健診受診が出来ていない方は「おうちでドック」のご利用をお勧めいたします。
今回は「おうちでドック」についてです。
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