こんにちは。
企業勤めの内科医ヒロスケです。
私は企業勤務の傍らで、週末には外来勤務も行っています。
そんな先日の外来の一場面。
ある女性が健診で異常値を指摘されたと受診されました。
eGFR値が低いと。
結論から言うと、数値は異常でしたが、全く問題なし。
晴れ晴れとした顔でお帰りになりました。
その理由もお話しますね。
eGFRって何?
eGFRとは、推算糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate)の略で、腎臓の機能を評価する際に用いる数値です。
腎臓は血液を濾過して尿を作り出す臓器で、この濾過過程で糸球体と呼ばれる部分が重要な役割を果たします。
eGFRは、この糸球体で濾過される血液の量を推定することで、腎臓の機能状態を示す指標となります。
通常、GFRを正確に測定するには24時間蓄尿が必要ですが、これは日常的な健診では実施が困難です。
そこで、血液検査のみで簡易的にGFRを推定するeGFRが広く用いられています。
eGFRの計算には、血清クレアチニン値、年齢、性別が使用され、特定の公式に基づいて算出されます。
その単位は「ml/min/1.73㎡」となります。
正常値は、60 ml/min/1.73㎡以上となります。
eGFRの落とし穴
さて外来を受診された方が陥った落とし穴について。
eGFRの単位にある「1.73㎡」に注目してください。
この数値はいわゆる標準体重の時の体の体表面積を示しています。
では、標準体重よりも低い人や大きい人は?
体重が軽い人が個別に体表面積を測定して計算した数値よりもeGFR値は低く出てしまいます。
本来の体表面積よりも大きな数値である1.73で割っているのですから分かりますよね?
例えば、40歳、女性、50kg、血清クレアチニン値:0.8で計算してみましょう。
eGFR値は63.5ml/min/1.73㎡となりますが、
これを体表面積を個別に換算して計算してみましょう。
計算は、Cockcroft-Gault式を使用します。
そうするとその数値は73.8ml/minとなります。
今回の例示はどちらも正常値ですが、このように体格によって数値が変わる特徴があるのがeGFR値です。
eGFR値が正常でもCockcroft-Gault式では異常値を示すことも珍しくありません。
どちらが信用できるか?というと、Cockcroft-Gault式での換算値になります。
Cockcroft-Gault式は抗がん剤の用量設定や国際共同試験での腎機能評価に用いられる指標です。
以上のことを説明したうえで、Cockcroft-Gault式が正常値を示したため来院された女性は安心してお帰りになられました。
ご自身の腎機能を正確に知りたい方は、Cockcroft-Gault式で計算されてください。
血清クレアチニン値が分かれば、後はウェブで計算してくれます。
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