コロナワクチン開発の試験デザインは?ロシア承認に足りないもの。

ワクチン

ロシアがコロナワクチンを世界でも最も早く完成させたと発表し、その報道に対して試験が不十分だとの報道があります。WHOは承認には厳格な審査が必要とコメントしています。いつからWHOは新薬を承認する機関になったのでしょう?

世界保健機関(WHO)の報道官は11日、ジュネーブからオンライン形式で記者会見し、新型コロナウイルスのワクチンをWHOが認証するには、安全性に関する「厳格な審査」が必要だとの見解を示した。

引用・:AFP通信

新薬やワクチンの承認を行うのは各国の規制当局です。日本であればPMDA、米国であればFDA、EUであればEMAというように規制当局がそれぞれの国・地域で対応しています。WHOは一体何の権限で認証するというのでしょうか?仮にある新型コロナウイルスのワクチンをWHOが認証したとしても、各国で販売使用されるにはそれぞれの国の規制当局がそれぞれ判断をしなければなりません。ワクチンの承認申請までの道のりを簡単に説明します。臨床試験は薬剤であってもワクチンであっても3段階で試験は行われるのが通常です。

1.ワクチンの第1相試験とは?

ワクチンの第1相試験の目的は、その投与量と免疫原性の探索です。免疫原性の探索とは、ワクチンを投与することで、抗体産生を促すこと液性免疫と、細胞性免疫を誘導する性質を指します。血中の抗体の出現の有無とワクチン接種によるサイトカイン濃度の変化などを確認します。また同時に安全性を確認します。小規模な人数で実施する予備的な試験です。

2.ワクチンの第2相試験とは?

第2相試験は、第1相試験より規模を大きくします。そのうえで、第1相で認めた免疫原性 と安全性の再現性を確認します。規模を大きくすることで、安全性のデータもより多く確保でき、また接種スケージュールなども明確にします。

3.ワクチンの第3相試験とは?

第3相試験は、できるだけ実地臨床に即した使用方法で試験を行います。それによって、市販後の有効性と安全性を出来るだけ詳細にシミュレート出来るようにデザインされた試験となります。シミュレートのためには、出来るだけ大規模な試験を行う必要があり、数千の単位の人が参加することになります。通常第3相試験は、発症予防を確認する必要があるので、実際にワクチンを投与した人としなかった人を比較して、ワクチンを投与した人の方がどれだけ少なかったかを統計学的に評価して、有効性を確認します。より信頼性を得るデザインにするのであれば、ワクチンの非投与群はプラセボを採用し、投与した医師も患者もワクチンかプラセボか知らされない無作為化二重盲検比較試験が望ましいと考えます。

4.ロシア産新型コロナウイルスワクチンの試験に足りないものは?

報道を見る限り、ロシア産のワクチンはまだ第1相~第2相試験途中と考えます。薬剤の開発は第3相試験を終えてみないとその効果と安全性は分かりません。第1相、第2相試験で非常に良いデータが出て期待に胸を躍らせていると第3相試験で足をすくわれることは非常に多いです。またワクチンは通常健常人に投与されます。したがって病人に投与する薬と比べると安全性のハードルは非常に高く設定されます。不治の病の人に投与して副作用が出るのと、健常人に投与するのでは、ベネフィットリスクは大きく異なります。新型コロナウイルスに対するワクチンが世界で強く求められているのは分かります。ただ有効性だけを求めて安全性をおざなりにするのは危険極まりないことです。

新型コロナワクチンの開発については、第3相試験をどこまで行うかは不明です。それだけニーズが大きいのは理解できます。しかしながら拙速なワクチン開発が大規模な薬害を引き起こす可能性は十分にあり得ます。新薬開発も同じですが、我々はその新薬・ワクチンがどのような試験デザインで、そのような結果を示したから承認されたのかを判断しなければなりません。

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