浦添市消防本部は7日、同本部内間出張所の消防司令の50代救急救命士が心肺停止状態の90代女性を救急搬送する際、誤って気管チューブを食道に挿入していた事故があったと発表した。女性は搬送先の病院で死亡が確認された。病院は死亡とミスの因果関係は不明としている。嘉味田朝消防長は「一分一秒を争う救命の現場で、ミスは絶対にあってはならない」と謝罪した。
引用:沖縄タイムズ
気管チューブが食道に入ることは病院の救急外来でも生じます。決して珍しくないことです。ですので、挿管を終えると必ず食道に入っていないのか?またチューブが深く入りすぎて片肺換気になっていないのかをチェックすることは非常に重要です。最近私は気管内挿管をしなければならない状況に迫られていないので、1回で挿管を完了させる自信はありません。今回の救命救急士が責められる点は、食道挿管をしたことではなく、その後のチェックを怠ったことでしょう。
沖縄消防はラリンゲルチューブを導入していないのでしょうか?ラリンゲルチューブは「気道確保に使用する。チューブを口腔から食道へ挿入し、チューブ先端のカフにより食道を閉鎖し、気管(肺)への換気を行うものである。」という目的で使用されるものです。つまり食道挿管はしてしまうものであるという前提で開発されたチューブです。平成16年7月以前は救命救急士は気管支内挿管を行ってはいけないことになっていましたが、その後訓練を受けた救命救急士のみ気管内挿管を行っても良いことになっています。個人的な意見ですが、基本的にマスクで換気できればほぼ問題なく、不確実な気管内挿管をするよりもマスク換気を実施の上、熟練の医師に気管内挿管をしてもらったほうが間違いないと思います。人手の問題で挿管をする必要があるのであれば、ラリンゲルチューブで問題ないのでは?と思ってしまいます。気管内挿管をしたほうが明らかに患者の救命率が高いという結論は出ていなかったと思います。
こういった事故は普段より起こりえます。大切なのは確認すること!どんなに熟練した救命医師であっても確認は怠りません。今一度救命救急士の気管内挿管については議論が上がってくるかもしれません。
コメント
救急救命士による気管挿管は、ラリンゲアルチューブ等の食道閉鎖式気道確保器具ではマネージメント出来ない、下気道閉塞の際に行われることになります。
しかし、気管挿管後の確認は怠ってはいけないのは仰るとおりだと思います。救急車の揺れや搬送時の患者様の動揺、騒音も沢山あるため救急現場での気管挿管はリスクが高い処置なのは間違い無いと思います。気管挿管後の確認も非常に難しいと思いますが、しつこいくらいに確認しなくては、患者様の命は勿論ですが、せっかく命を救いたいという強い気持ちで処置をした救命士も報われません。
私の知人の救命士は、明日には仕事をクビになるかもしれない。その覚悟をしなければならないくらい救急現場でたった1人で判断と処置を行うのは怖い。看護師や検査技師のように自分を支えてくれる人は誰も居ない。と言っていました。
患者様のためにも、救命士本人のためにも、不確かな時は気管挿管をやめておく勇気は必要なのかもしれないですね。やめておいたらやめておいたで患者様は下気道閉塞が解除できないので換気は出来ないままになりますが。
とんちぴー様
コメントありがとうございます。下気道閉塞については考えていませんでした。どちらにしても現場では判断に苦慮する内容ですね。私も内科の医師ですので、現場のストレスは良く知っているつもりです。
現役挿管救命士です。
今回、この救命士が食道閉鎖式エアウエイではなく、気管挿管を選択した理由は、おそらく口腔内に嘔吐物や血液等の貯留が多く、気管挿管じゃないと気道確保できないと判断したからではないかと推測します。
そうでなかったら、胸骨圧迫の停止時間、現場活動時間や搬送時間の短縮を考えたら第一選択に入らないし、こうやってメディアに叩かれることを考慮するとなおさら「挿管する」っていう選択にはならないですね。
地方では、医師だから気管挿管が上手いという訳ではないです。
いずれにせよ、食道挿管はよいことではありません。
しかし、現場では患者の体を動かすことが何度もあるため、管がずれることもよくあります。
私は、首の屈曲によるズレを防ぐため、ネックカラーを装着してから搬出を開始しています。
コメントありがとうございます。勉強になります!!